モバイルバッテリー

ツーリング中のモバイルバッテリー活用術

性能と安心を両立させるモバイルバッテリーの選び方

ロングツーリングでは、ナビとして酷使するスマートフォンとインカムの電力をいかに確保するかが行程全体の快適さを左右します。容量は1万mAh(約37Wh)を下回ると休憩ごとに再充電が必要になりがちなので、目安としては15,000mAh前後を選ぶと一泊二日でも余裕が生まれます。近年はUSB-C Power Delivery30W対応モデルが主流で、PDなら30分の休憩でも50%近くまで急速充電できるため、走行中のみならず食事休憩でも効率よくバッテリーを回復できます。

また、2019年以降はモバイルバッテリーにもPSEマーク表示が義務化されており、粗悪品排除と保険対象拡大が進んでいます。必ず丸形PSEマークを確認し、内部に温度保護回路を備えたモデルを選ぶことで夏の炎天下や冬の極寒でも発火リスクを抑えられます。さらに低温性能では−10°Cでも80%以上の出力を維持できる“リチウムポリマー”セルが有利です。筐体はアルミは放熱性に優れますが転倒時へこみやすいので、ラバーコートか樹脂バンパー付きがツーリング向きです。

スマートで確実な接続方法と運用テクニック

走行中の接続は「振動吸収」「防水」「脱着容易」の三点で考えると失敗しません。ハンドルバーにスマホを固定している場合、モバイルバッテリーはタンクバッグ内に収め、バッグ外周からケーブルだけを引き出すと雨対策がシンプルになります。ケーブルは高耐久ナイロンメッシュで、長さは60〜80cm程度が振動による負荷を避けつつバッグ開閉の邪魔になりません。USB-C⇄USB-Cケーブルなら最大100Wまで許容するため、将来的にカメラやノートPCを充電したいケースにも流用できます。

防水はIPX5以上のパウチ型ケースが手軽ですが、ゲルシートでスマホとバッテリーを背面合わせに固定できる専用ホルダーを使えば、雨天時でも配線が最短距離になり水滴の侵入リスクを大幅に低減できます。走り出す前には必ず充電開始を確認し、LEDインジケーターが反応しない場合はケーブル差し替えを試してから走行に移りましょう。信号待ちではスロットル操作が途切れる間に充電停止が起こることがあるため、休憩ごとに接続状態の点検をルーティン化しておくと安心です。

持ち運びと保守で長寿命を引き出すコツ

ツーリングでは“2台体制”が理想です。走行中に使う15,000mAhクラスに加え、キャンプ地や宿でゆっくり充電を担う1万mAhのサブをバッグ最深部に忍ばせておくと、万一の故障や落下でも電源を失いません。寒冷地ではバッテリー本体が冷えると内部抵抗が増え出力が低下するため、早朝はジャケットの内ポケットで人肌に温めてから使用すると容量ロスを防げます。
逆に真夏はタンクバッグ内が50°C近くになることもあるので、走行風が当たるシート下ポーチへ移すなど温度管理も大切です。充電残量を0%まで使い切る“ディープ放電”は劣化を早めるため、残量20%を切った時点で交替バッテリーへ繋ぎ替えるとサイクル寿命を伸ばせます。

帰宅後は満充電ではなく60〜70%で保管し、月に一度は充放電してセルのバランスを保つと、次の旅でも放電ロスなく活躍します。使い終えたバッテリーは自治体指定か販売店のリサイクル回収を利用するとリチウム資源の循環に貢献でき、ライダーとしてのエコ意識も磨かれるでしょう。