革新的ラインアップが示す電動二輪の現在地
スウェーデン発の電動メーカーCAKEは、2025年時点で「Kalk」「Ösa」「Makka」「Bukk」という四つの系統を展開しています。中核のKalkは最高出力11kW・瞬時トルク280Nmの軽量オフロードで、車重は約70kg台に抑えつつ最高時速90km超を実現します。Ösaはユニバー形状のバーフレームに各種ラックや工具を直接固定できる“作業台バイク”で、積載260kg・航続110kmを誇ります。都市通勤向けのMakkaは最長70km走行と自転車レーン走行を可能にする“レンジ”と、45km/h仕様の“フレックス”を用意し、全長2m未満のコンパクトさで路上駐車を回避できます。
旗艦Bukkは2.9kWhバッテリーと20kWモーターが生む456Nmという圧倒的トルクを武器に、105km/hまで一気に加速。車重は90kg前後に抑えられ、前後19/18インチホイールと大径ディスクで本格エンデューロにも耐える設計です。四モデルはすべて着脱式バッテリーを共有し、家庭用100Vなら約2.5時間で満充電できる点も共通しています。いずれもモーター騒音は60dB未満で、早朝や夜間の住宅街でも周囲への配慮がしやすいことも魅力です。
モジュール設計が生む性能と乗り味の差
CAKEの車両はフレームと電動ユニットをボルトオンで分離できるモジュラー設計が特徴です。KalkとBukkのアルミ押出しフレームはオフロード重視で高いねじり剛性を確保し、細身のシートと狭いステップ幅によってスタンディング時の荷重移動が行いやすくなっています。対してÖsaはバーフレーム全体をアクセサリーレールとして活用する思想で、キャンプギアや配送ボックス、ソーラーパネルまで固定可能。Makkaは都市部の段差をいなすためフロントダブルクラウンフォークを省き、ハンドリングを軽量スクーター並みに調整しています。
同じ出力値でもギア比とタイヤ径が異なることで加速特性と航続距離が変わる点も面白く、Bukkは0-45km/hを2.1秒で駆け抜ける一方、Ösaは定速60km/hクルーズで約2時間半の航続を記録します。サスペンションはオーリンズまたはWPを選択でき、ユーザーが用途に合わせて乗り味を最適化可能です。ブレーキは油圧ディスクと回生制御を組み合わせ、都市走行で一日の消費電力の約6%を回収。急勾配下りではリヤ回生だけでバッテリー温度を抑えながら減速でき、パッド摩耗とダストも低減しています。
サブスクとB2Bで拡大するCAKEの市場戦略
CAKEは直接販売とオンライン完結型の「Build & Order」を軸としつつ、2023年に月額定額の法人向け「CAKE Subscribe」を開始しました。サブスクリプション方式により初期費用ゼロ・整備込みを実現し、デリバリー業者や自治体に数十台単位で導入が進行中です。Volta Trucksとの協業では移動式電動トラックを“マイクロハブ”として活用し、輸送のラスト1マイルをMakkaでカバーする低炭素配送モデルを欧州都市に展開。
さらにメキシコ大手Italikaとの提携で北米組立体制も整え、新興国の渋滞と大気汚染課題に対し小型高効率EVの選択肢を提供しています。2025年には日本法人が設立五年目を迎え、Bukkの限定色と法人パッケージを国内販売100台規模で計画中です。サステナブル素材への置き換えやバッテリー二次利用にも投資を加速し、CO₂ゼロ製造を目指すロードマップを掲げるなど、単なるバイクメーカーから“電動モビリティ・プラットフォーム”への転換を鮮明にしています。

