ロシアのイメージ

URAL(ウラル)

サイドカー文化を支える主要モデルの個性

ウラルが展開する現行ラインアップの核は「Gear Up」と「cT」です。Gear Upは伝統の2WD機構を備え、右側サイドカーの車輪をレバー操作で駆動輪に切り替えられるため、深雪や砂利道でもトラクションを失いにくいのが最大の魅力です。2025年モデルのGear Up Standardは空冷OHV水平対向2気筒749ccを搭載し、最高出力約41hp、最大トルク55Nmを発生。

新設定のExpeditionパッケージでは強化サスペンションや大型キャリアを加え、価格は372万3500円(税込)からとアドベンチャー志向を一段と強めています。一方、2025年モデルで復活したcTは1WD専用シャシーで100kg近い軽量化を果たし、舗装路主体の軽快なハンドリングと都市部での取り回しを追求した仕様です。エンジンはGear Upと共通ながら、車高を低めたことでサイドカー未経験者でも自然なステアフィールが得やすく、エントリーモデルとして再び人気を集めています。

2WDと1WDが生む性能差とライディングフィール

Gear Upの2WDシステムは、サイドカー走行で最も不安の大きい右コーナー外輪差を小さくし、未舗装路でのスタックを回避する安心感を提供します。駆動力が両輪に分散するため発進トラクションが高まり、重量増にもかかわらず砂地や雪上ではcTよりも力強く前進します。

一方で2WD機構の追加はバネ下重量と慣性を増やすため、舗装路での回頭性は1WDのcTに軍配が上がります。cTはシャシー全体を低重心化しホイールベースも短縮、フロント19インチを採用しながらもステアリングオフセットを最適化することで、交差点での切り返しやUターンをスムーズにこなします。純正ブレンボ3輪ディスクブレーキは両モデル共通ですが、車重の軽いcTは減速Gが穏やかで、サイドカー初心者でも制動時の挙動変化を読み取りやすい特性です。燃費は両モデルとも実走16km/L前後で大差ありませんが、旋回抵抗の小さなcTは市街地主体のツーリングで1割ほど航続距離が伸びる傾向にあります。

サスペンションはサイドカー付きの特性上ストロークが短く設定されており、Gear Up Expeditionではアジャスタブルショックが装備されることで高速ダートでもピッチングを抑制。これらの性能差は使用シーンで明確に表れ、ライダーに“道を選ばず行くか、街で粋に乗るか”の選択肢を提示しています。

カザフスタン移転後に描くウラルの市場戦略

2022年夏、ウラルは80年続いたロシア・イルビト工場からカザフスタン・ペトロパヴロフスクへ最終組立拠点を移し、サプライチェーンを再構築しました。新工場初号機が稼働した7月23日以降、部品の国際調達比率を高めることで欧米・日本向けの出荷を再開し、生産遅延の解消と品質向上を図っています。この移転を機に、同社は「モジュラー生産+カスタムオーダー」を掲げ、カラーリングや装備をオンライン上で細かく指定できるビルドシステムを各国ディーラーへ展開。

さらに2025年モデルでは技術変更を最小限に抑えつつ価格据え置きを実現し、円安で割高感の出やすい日本市場でも末端価格を維持する戦略を採っています。環境面ではEU排出規制Euro 5 bに適合する燃調マップへ更新し、2026年以降の電動サイドカー構想も公表。レジャー需要だけでなくデリバリーやツアリズムといった業務ユースへ販路を広げることで、ニッチなサイドカー市場をグローバルに掘り起こす計画です。ウラル独自の“サイドカーで行こう”というライフスタイル提案は、移転を経てより柔軟かつ国際的なフェーズへ踏み出しています。